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写真集

日本再発見、日本人の暮らしと心

芳賀日出男著 日本の民俗上巻「祭りと芸能」 下巻「暮らしと生業(なりわい)」のご紹介。

「写真集『日本の民俗』上・下巻に収録してある写真は、昭和27年(1952)から平成八年(1996)までの日本人の暮らしを民俗の視点で撮影してきた。
 伝統的な行事や村の共同体の生活を多く取り上げている。そのために古い時代の写真のように見えるかも知れないが、平成八年までに44年間にわたり継続して撮影して写してきた。半世紀近い時の流れの間には変化したり、消滅したものもある。民俗とは人々の人生そのものだ
 日本人は神社で結婚式をあげ、お寺で仏式の葬式をする人が多い。それで自分には特別に宗教心がないと思っている。ところが、正月の初詣にはじまり、四季それぞれに祭りや年中行事がある。生まれて誕生祝いから死後33年目の先祖入りまで数多くの人生儀礼が続く。年中行事人生儀礼に加わらないと、人々とのつきあいは疎遠になり、何となく心が落ちつかず、生存の虚しさを味わう。

 本書の写真は日本の民俗に限られている。動揺している地域社会の共同体の内側に入って語りあい、外側からは距離を置いて眺めながら、変化の遅い伝承と習俗の部分を心して半世紀近く写真に収めてきた
 これからも、今までと同じようにかけがいのない母国の生きざまを撮り続けていきたい。」

(上巻あとがきより)

【日本の民俗(上巻)--祭りと芸能---の構成】

 1 御幣
 2 訪れ神
 3 初春の祝福芸
 4 鬼
 5 獅子舞
 6 清めと祓い
 7 託宣
 8 田植えの祭り
 9 田植えの祭り
10 収穫感謝の儀礼
11 能と狂言
12 延年の舞い
13 里の神楽
14 盆踊り
15 語り物
16 風流
17 手作りの年行事

御幣

国津神事 福井県三方群三方町 (上巻14ページ)

当夜での祝宴を終え、村立ちをする。朝からの振舞酒でみんなうかれて楽しそう。

大事な御幣をかかえ、氏神の境内へと練り込む。

訪れ神

弥勒(みるく)の神 沖縄県竹富町 昭和63年(上巻36ページ)

浜辺に現れた訪れ神の弥勒。ふくよかな表情で黄色の衣装に黒帯をしめている。右手に軍配を持ち、

左手で杖をついている。背後には三線(さんしん)の音曲に弥勒節を合唱する人たちが付き従っている。

初春の祝福芸

春駒 新潟県佐渡郡相川町 昭和38年 (上巻58ページ)

馬の首にまたがった男駒は黒面をつけ、正月から2がつにかけて島内をめぐる。

囃子方は団扇太鼓を唄にあわせて軽く打つ。

田植えの祭り

壬生の花田植え 広島県山県郡千代田町壬生 (上巻133ページ)

大太鼓は長胴枠付の締太鼓で、若者が腰につけて力いっぱい打ち鳴らす。

白い毛の房のついたばちを持ち、体を左右にねじり反り、

片手でばちを高くあげ、他方の手で打つ曲技もおこなう。

収穫感謝の儀礼

あえのこと 石川県能登半島 昭和29年 (上巻144ページ)

田の神が座敷にはいると、家族そろって挨拶をする。長い間、土の中におられた苦労をねぎらい、

豊作に感謝する言葉を述べる。主婦はご馳走についていちいち説明を申し上げる。


風流

水口祭りの「ほいのぼり」 滋賀県水口町 昭和39年
 春祭りの神社の境内に、しだれ桜を咲かせたように造花の幟を立てる。秋の豊作を願う。(上巻227ページ)


【日本の民俗(下巻)---暮らしと生業(なりわい)---の構成】

 1 正月
 2 盆行事
 3 稲作
 4 漁村の暮らし
 5 海女
 6 巫女(みこ)
 7 人形まわし
 8 木地師
 9 さまざまな生業
10 運ぶ
11 市
12 親族集団
13 人生儀礼


 「私はかえりみると、写真家としてきわめて狭い道をたどりながら歩いているような気がする。20世紀の後半になっても変化のおそい習慣がわだかまっている日本人の暮らしぶりにひたすら写真の視線をむけてきた。
 そこには人々が毎年くりかえし続けているハレとケの生活のリズムが見える。..........就学して私は教室の片隅で折口信夫教授の国文学の講義を受けることになった、はじめのうちは全く事業の内容がわからなかった。
 それでも折口の上方(かみかた)言葉の含みのあるやさしいイントネーションに引き込まれて授業に出席し、講義に耳をかたむけた。東京弁の歯切れの良さとはまた別の優雅さがあった。くりかえし語る「依代(よりしろ)」とか「御霊(ごりょう)」という言葉を聞くうちに、母国の古代からの神秘的な信仰がわかりかけてきた。

 あるとき折口は講義のなかで語った。
 「神は季節の移り目に遠くから訪れ、村人の前に姿をあらわします」と。
本当だろうか。もしそうなら、写真に撮ることができるかもしれない。今にして思えば、折口の学説の根幹をなす「まれびと」論であった。
 私はそのひと言に目覚める思いがした。」

(下巻あとがきより)

正月

賽(さい)の神送り 新潟県小千谷市 昭和38年 (下巻43ページ)
 正月の夕方、稲わらを円錐形に積みあげ、門松やしめ縄と一緒にもやす。

お正月様は賽の神の火と煙に乗って空にもどっていく

稲作

はながお 秋田県由利郡矢島町 昭和55年 (上巻76ページ)

農家の女性が夏から秋の稲刈りにかけてのかぶりもの。陽よけ、汗よけ、虫よけのために顔をおおう。

海女

海女の背中 石川県舳倉島 

貝金を右の後腰にさし、腰には麻縄のはちこをしめ、船の重りをつけている。

海女は潜水の前に貝金で船ばたのへりを軽く打って安全を祈り、呼吸をととのえる。

人生儀礼
かにをはわせる
 鹿児島県大島郡和泊町 昭和31年 (下巻210ページ)
 赤子の額の上にのせ、蟹のようにはやく這いまわれという親の願い。脱皮する蟹の成長ぶりにもあやかる。

七日祝いというが、這いだすころにもする。



全国の祭り、郷土芸能、人生儀礼、伝統的な生活を、1950年より現在に至るまでの貴重な写真と平易な文章とで一挙展開。日本の民俗のもつ意味をもう一度再認識させてくれる格好の書です。

全国の図書館に所蔵されていますので、ぜひご覧ください。

芳賀日出男著 日本の民俗 上・下  ◎体裁 ●B5版上製本 ●カバー装 ●各巻平均280ページ ●各巻モノクロ写真約330点 職人が精をこめて丹念に焼いたモノクロ写真です
お問合わせ先 クレオ出版営業部 〒150東京都渋谷区道玄坂1-21-6南平台東急ビル8F TEL:03-3464-3025 FAX 03-3464-0875
◎定価 各巻4830円(税別) 一般書店でお求めください 
 


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